小説『水晶玉の向こうに』 第7話

小説『水晶玉の向こうに』 第7話

翌日、麻衣は放課後の校舎裏で奏太を呼び止めた。
「三浦くん、少しだけ時間あるかな?」

奏太は驚いたように振り向いたが、すぐに小さくうなずいた。
「もちろん、いいよ。」

二人は校舎裏の静かな場所に移動し、麻衣は深呼吸をしてから口を開いた。
「突然ごめんね。でも、どうしても伝えたいことがあって……。」

奏太は黙って麻衣の言葉を待っていた。

「私、三浦くんのことが好きです。」

その告白は、麻衣らしく真っ直ぐで嘘のないものだった。彼女の目には迷いがなく、その勇気が奏太にも伝わっていた。

奏太はしばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「ありがとう、麻衣。正直に言ってくれて嬉しいよ。でも……俺には、他に好きな人がいるんだ。」

その言葉に、麻衣の表情がわずかに曇った。
「そっか……。それって、叶さん?」

奏太は驚いた顔を見せたが、すぐにうなずいた。
「そうだよ。俺、叶のことがずっと好きだったんだ。」

麻衣は一瞬目を伏せたが、次の瞬間には笑顔を作り直していた。
「分かった。正直に言ってくれてありがとう。私、告白できてよかった。」

その場を去る麻衣の背中を見送りながら、奏太の胸には複雑な思いが渦巻いていた。

一方で、叶は部室に一人でいた。
麻衣と奏太が話している間、叶は心の中で落ち着かない時間を過ごしていた。

「どうしてこんなに気になるんだろう……。私、何を期待してるの?」

水晶玉を見つめると、そこには何も映っていなかった。答えを知ることが怖いのか、それとも本当に未来がまだ見えないのか――。

その時、部室の扉が開いた。奏太だった。
「奏太くん……?」

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